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FEATURE特集

お別れの時を過ごす私的空間[京丹後市火葬場]

大切な人を送り出すための、
家族だけの時間と空間

老朽化した地域の火葬場3つが統合され、新しい火葬場が生まれました。
大切な家族を送り出す、最期の時間をどう過ごすか。そのことを随所で考えた建築です。

お別れにはひとつの流れがあります。
その場に向かう一筋の山道。丹後の大地と、緑と、空に挟まれた道を行き、
気持ちを落ち着けながら通路を歩み、お別れを迎え、時を待ち、
そして、最期のお別れ。
この家族を送り出す一連の時を、家族と近親者だけの空間で過ごせるように、
配置と動線を計画し、空間を整え、プライベート性を高めました。

そこで設えた特別な空間が、お別れの部屋。ほの暗い静寂の空間に自然光が注ぐ、生と死の狭間です。
お別れと収骨をひとつの部屋で行う、その家族だけの空間をつくりました。

もうひとつが、家族の待合室。前庭とその向こうの丹後の山並みに向けて開けた部屋です。
大地に視線を向けながら、お別れの時を待ちます。

お別れ室
待合室から望む丹後の山並み

お別れの時へ自然に導いてくれる建築

お別れにはひとつの流れがあります。その一連のシーンを慎重に描きながら、家族の気持ちに寄り添う場を設えました。お別れの空間は暗く、待合の空間は明るく、気持ちを整理し切替えられる環境に整えています。お別れの時へ向けて、自然に導いてくれる建築です。

森を抜け、雑木林を分け入る長い道のり。やがてたどりつく建物で、深く明るい庇に包まれる。

石壁の廊下に身を寄せながら、進む先にホールの入口が見えてくる。ホールに入ると暗転。視線の先の光に向かい格子壁沿いにゆっくりと歩を進めると、天窓から光の注ぐお別れ室入口が現われる。

家族だけのお別れ室。

お別れの後、光庭に誘われるまま近づいてゆくと、静かで長い通路に気づく。

通路を曲がり抜けると、明るく開けた待合ロビー。奧には家族の待合室。丹後の自然と山並みへ向けて、視線は遠く延びてゆく。大地との繋がりを感じながら、お骨を迎える時を待つ。

その時が来て、折れ曲がる通路を抜け、再びお別れ室へ至る。

お骨とともにホールを出て、明るく開けた玄関から帰途に就く。

平面図

家族だけのお別れ室

旧来火葬場は、炉前のお別れの場と収骨室は別の場合が一般的でした。しかしここでは、炉前と収骨室を一体化し、ひとつのお別れ室として設えました。そうすることで家族がその場を占有し、家族だけの時間を過ごすことを大事にしたいと考えたからです。また到着してからお帰りまで、一方通行の動線として整理することで、他家族との重なりを減らしました。室内は上下で明暗を対比させています。壁下部は暗色で粗くエイジングがかった質感の陶板タイル。目地をつくらず連続させることで深みを生んでいます。上部は白く薄明るい鏝仕上げ。間接光が柔らかく伸びています。天井は片側を曲面でせり上げトップライトからの自然光を採りこみました。室内は下部を深い暗さで、上部を柔らかな薄明かりで包むことで、人生の振り返りに相応しい静謐な空間に仕上げています。

お別れ室壁面下部。陶板タイル仕上げ
お別れ室壁面上部。鏝の扇仕上げ

丹後の自然と山並みに対峙する

収骨の時を待つ待合室。それは家族と近親者が故人を想う時と場所。人生を振り返りながら、故人が行き着いたこの丹後の地と自然と山々にまで視線を巡らすことができるよう、大地に抜ける方向に大きく開口を取りました。幹線道路からのアプローチを長く取り、敷地の奧に小山を背にする形で建物を配置しました。手前の幹線道路方向に視界が広がるが、道路は低い位置にあるため視界に入りません。この視線の行く先は、丹後の山々。

待合室から丹波の山々を望む。左はアプローチとの境界壁
待合ロビーから前庭を望む

炉のある高い部分を敷地の奧に配置し、山を背負う形にした。手前から見えるボリュームが抑えられる。アプローチ道路を長くとり、敷地の奧に建物を配置。手前道路との間に植栽を入れ視線を制御した。南に下がる敷地から、待合室の開口は南側に大きく取っている。

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