FEATURE特集
東北で巡る木の空間
女川スタジアム
J3昇格を目指すチーム拠点づくり
女川町復興まちづくりの一つである清水公園の管理施設として、町内サッカークラブのJ3 昇格を目指すチーム拠点として、女川スタジアムは生まれました。
津波対策の嵩上げ造成の法面をメインスタンドとして活用し、建築基礎の負担を最小限にする土木一体の公園整備は、環境配慮や経済的な合理性を生み出しつつ、観戦におけるエキサイティングな臨場感を与えます。
緑に溶け込むクラブハウス
⽊構造、杉板張りのクラブハウスは、緑豊かなリアス式の山々に呼応し、溶け込むようなファサードとします。
駅前から続くアプローチでは、木の表情が観客を優しく迎え入れ、メインスタンドの背後ではピッチを見下ろすように、大きな勾配屋根がグラウンドを力強く包み込みます。
フィジカルな空間を包む木の温もり
石巻市立河北保育所
田園風景に浮かぶ子育ての場
石巻市公立幼稚園・保育所・こども園再編計画により、3 つの保育所を統合した新たな子育ての場が生まれました。
周辺に水田が広がる敷地では、冬期の西風、北風による風への対策が必要となり、L 型に配置された建物が、子どもたちの活動の場、園庭を優しく守ります。
子どもを優しく包み込む木架構
片流れ勾配屋根は、子どものスケールに合った半屋外の縁側空間を生み出しつつ、高窓から心地よい明るさを保育室に採り入れます。
均一な木造垂木構法による木の風合いが、大らかに子どもたちを優しく包み、縁側空間から園庭に繋がる屋内外の一体感を生み出します。
機能・活動・構造のシンボル
日々の遊び場でもあり、非日常の行事やイベントの舞台となる遊戯室は、園庭側に大きく開かれた切妻屋根とリズミカルな方杖を持つ大スパンの空間とし、片流れの屋根並みにアクセントを与え、保育所のシンボルとなります。
安心安全な子育て環境
出入口付近の来客用駐車場と敷地奥の職員駐車場を明確に区分し、保育所へのアプローチも分かりやすく、かつ職員室から外来や登園の様子を把握できる、安心安全の子育て環境とします。
道の駅石鳥谷トイレ休憩施設
南部杜氏の里に調和する大屋根
南部杜氏の里にふさわしい、大らかで力強い大屋根のトイレ休憩施設が、道の駅石鳥谷に生まれました。
30 年の歴史ある道の駅には、酒造りの歴史文化を伝える様々な施設があり、3 カ所のエントランスから様々な利用者を招き入れる大屋根の下で、確かな交通情報と癒しの場を提供します。
縁空間を生み、積雪に耐える木架構
切妻屋根の木架構は、奥行のある軒下・縁空間として、天候に左右されない安全なアプローチを生みます。
三寸勾配とした小屋組みは、無駄のない天井懐で費用対効果を高め、3 段に配した雪止め金物は、外周部への落雪の危険性を最小限に抑えます。
安らぎを与える木質空間
休憩室には力強い小屋組の下に畳敷きの小上りを設け、全身が休めるしつらえとします。木の香りが立つ杉板張りの内装壁は、手触りのよい質感と温もりを伝え、利用者の五感にしみる安らぎを提供します。
富岡町共生サポートセンターさくらの郷
復興の町を灯す福祉拠点
避難指定が解除された復興の町に、帰町者の生活を支える福祉拠点が生まれました。
かつてにぎわいのあった小学校跡地で、特別養護老人ホーム桜の園とトータルサポートセンターとみおかが様々な世代の活動や交流を支え、“ともに生きる場” として、真の復興の未来を灯す希望となります。
木梁を中心に集う“大きな家”
トップライトから日差しが降りそそぐ大廊下は、木梁架構による福祉拠点の骨格として“大きな家” の生活、活動の中心となります。
世代をつなぐ軒の縁
娯楽室は、トータルサポートセンターとみおかの様々な活動と、中庭を介して向き合います。縁側を持つような軒の連なりは、施設相互の活動を結びつけ、人づきあいのきっかけとなります。
世代を超えた交流、にぎわいが小学校跡地にあふれ、復興の町に心の拠り所となる拠点を生み出します。
柔らかい表情の木仕上げ
梁材と桧板張り天井が木の優しい表情を生み出し、多くの居住者が日々集う空間を優しく包み込みます。
木造りの特徴
女川スタジアム
フィールドを鼓舞する勾配屋根とCLT 床板によるコンパクトな2層断面。
石巻市立河北保育所
こどもの空間に軽やかさとリズミカルな楽しさを生み出す、方杖架構。
道の駅石鳥谷トイレ休憩施設
深い軒と骨組みの力強さを生み出す、和小屋組み。
共生サポートセンターさくらの郷
心地よい光を採り込み、対のユニットに強い求心力を与える、片持ち登り梁の相持ち架構。
特記なき限り写真撮影 / GlassEye Inc. 海老原 一己
※1 撮影 / 日総建
※2 撮影 / 有限会社アカマフォトスタジオ 赤間 幸子
※3 撮影 / エスエス東北 齋藤 涼
ドローン撮影・編集 / GlassEye Inc. 海老原 一己・木村 美貴
※2024/1/31 富岡町共生型サポート拠点の名称を変更
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